医師から患者さんへのメッセージ

医師から患者さんへのメッセージ

■脊髄損傷とED


小谷俊一中部労災病院泌尿器科 部長
小谷俊一

パートナーが交通事故で脊髄損傷になり、EDになりました。よい治療法はあるのでしょうか。

●脊髄損傷患者さんのED治療薬有効率は7割

脊髄損傷によるEDは、器質性EDですからそれ自体は治るものではありませんが、治療をすれば勃起力を回復できるケースは多数あります。当院の泌尿器科では、これまで284名の脊髄損傷患者さんにED治療を行ってきました。以前は、局部に注射を打ったり、バキュームで陰圧にしたり、いずれも面倒な治療法しかなく、患者さんも苦労しました。しかし、1999年のED治療薬の登場によって、治療薬を飲むだけの簡単な方法になり、ED治療は劇的に変わったと言えます。
これまでに129名の脊髄損傷患者さんにED治療薬を飲んでもらっていますが、薬の有効率は約7割。器質性EDの中では最もよく効くというデータがあがっています。患者さんからは「けがをする前と同じようにセックスできるようになった」と大変に喜ばれています。

※中部労災病院泌尿器科調べ

私は頚髄上部の脊髄損傷によってEDになりました。
私の場合、ED治療薬で効果があがるのでしょうか?

●頚髄・胸髄の脊髄損傷には高い有効率

勃起は、性的興奮に伴って起こる「性的勃起」と、性的興奮を伴わない「反射性勃起」に大別されます。脊髄損傷の方では、脊髄のどの部分が損傷しているかによって、EDの様子は変わってきます。
勃起中枢は、第11胸髄-第2腰髄、第2-4仙髄にありますので、脊髄損傷の場所が第11胸髄-第2腰髄よりも上の場合、つまりあなたのような場合には、大脳中枢からの性的刺激が損傷部位で遮断されるために性的勃起は起こりません。しかし、第2-4仙髄は正常ですから、導尿・清拭などの刺激をしたときに反射性勃起が起こるでしょう。反射性勃起が強く残っているほど、ED治療薬の効果が望めると思います。ED治療薬が有効な方が多いので、専門医に相談されてみてはいかがでしょうか。

ED治療薬が、効きやすい人とそうでない人がいるのですか? 長年飲んでも安全ですか?

小谷俊一

●ED治療薬は、若い人の方が効きやすい!

足が動く、あるいは足に痛みを感じるような不完全麻痺の場合は、ED治療薬が効きやすいと言えます。また、一般的には中高年の方よりも若い方のほうが効きやすいと言えます。なぜなら中高年は、糖尿病や動脈硬化などといった生活習慣病が出ていることが多いので、もともとEDになりやすい要因をいくつか抱えていることが多いからです。
脊髄損傷の患者さんの場合、勃起を得ようとしたらED治療薬を長期間飲むことになります。1999年のED治療薬の発売以来、ずっと飲んでいる方もおります。薬の副作用を心配する方も多いのですが、長期間飲んでも効果が落ちてくることはありませんし、専門医から処方してもらい、正しい飲み方をしていれば安全性が高い治療薬といえます。

 
脊髄損傷で結婚をしていますが、ED治療を受けたら、将来子どもができる可能性はありますか。

●子どもがほしいときは、射精障害の治療を

国内外の男性脊髄損傷患者の実態調査では、勃起可能な人は6割を超えていますが、射精可能な人は15%でした。射精可能な方であれば、EDであっても治療薬の助けを借りれば、膣内射精によって子どもができることはあります。しかし、パートナーの女性が妊娠に成功した例に至っては2%と極めて少ないのが現状です
反対に射精障害があれば、ED治療によって性交ができるようになっても、子どもはできないのです。射精障害を治すには別の治療が必要になります。
射精障害のある患者さんに対しては、ED治療薬を処方する際に「ED治療薬は、射精障害の薬ではないこと」をきちんと説明しています。ただし、射精障害があっても、ED治療薬でセックスが可能になったことで、生活に自信につくようになった人は大勢います。

※中部労災病院泌尿器科調べ

 
脊髄損傷の人が、ED治療薬を飲むときの注意はありますか。

●低血圧の人は、体位に注意を

ED治療薬を飲むときやセックスのときに注意していただきたいことがあります。朝起きて車イスに乗ろうと上体を起こしたときなどに、頭がくらっとしたことはありませんか? このような頚髄損傷の患者さんの場合には、血圧の低いことが少なくありません。ED治療薬には血圧を若干下げる作用があるので、低血圧の方は、服用量を主治医と相談しながら調節していくことをおすすめします。また、セックスのときに男性上位になると血圧が変動しますので、女性上位になるようにアドバイスしています。