EDの原因
EDとはErectile Dysfunction(勃起障害、勃起不全)の略であり、
「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」と定義されています。
(ED診療ガイドライン[第3版])
勃起は神経系と血管系が正常に働くことにより起こります。
そのどちらか、あるいは両方に障害が起きることがEDの主な原因と言われています。
加齢や精神的な原因に加え、高血圧症や糖尿病など、生活習慣病が原因となります。
逆に言うとEDの症状から基礎的な病気が見つかることもあるようです。

EDの原因は?
EDは、ストレスなどの精神的、心理的な原因、糖尿病、高血圧症などの心血管系疾患に加え、
肥満と運動不足、喫煙などの生活習慣からも起こるといわれています。
性的刺激によって、神経を介し勃起の信号が送られると、
陰茎海綿体の動脈が開いて血液が流れ込みます。
海綿体はスポンジのように血液を吸い込んで貯め、膨張して硬くなります。
これが勃起した状態です。
しかし、生活習慣病や心理的な原因により神経と血管の働きが不十分だと、
陰茎海綿体への血液の流れ込み方がたりずにEDが起こります。


監修:東邦大学 名誉教授 石井延久 先生
たとえば、糖尿病になると、神経が障害されたり、血管が硬くなることで、
性的刺激による血管の拡張が不十分で、血流を抑えると考えられています。
糖尿病の患者さんが抱く日常生活の悩みとしてEDや性欲低下を挙げる方が多いと言われます。
高血圧症では、血圧が高くなると、血管が損傷して硬く狭まります。
これによって、ペニスの血流を抑えてしまうと考えられています。
このように生活習慣病とともにEDの症状が現れることがあります。
服用している薬は
ありませんか
服用している薬によっては、EDを引き起こすおそれがあることが知られています。
たとえば、精神的疾患あるいは神経学的疾患などの病気の治療に使われる抗うつ薬でも、EDが引き起こされることがあります。これらの薬は、脳内の神経細胞に作用して、抑うつや不安などの症状を改善します。
しかし、同時に体のほかの部分にも影響してしまうのです。
こうした薬では、神経の働きへの影響がEDの原因となることがあります。
その他、次のような薬がEDの原因となるといわれています。
- ●
- 降圧薬
- ●
- 抗うつ薬
- ●
- 前立腺肥大症治療薬
- ●
- 髄腔内バクロフェロン療法
- ●
- 非ステロイド性抗炎症薬

日本性機能学会/日本泌尿器科学会編:”4 EDのリスクファクター”ED診療ガイドライン 第3版 リッチヒルメディカル:10, 2018
これらの薬剤を服用されている場合は、医師とよく相談の上、疾患の治療とともにEDと向き合っていくことが重要です。
うつ症状からEDに
勃起に関与する血管や神経などに器質的障害がなく、
心理的要因によって生じるEDを心因性EDと言い、
EDの最も多い原因であるといわれています。
40代後半から50代前半(45~55歳)の日本人男性では
うつ病や不安状態がEDと関連しているとの報告もあります。
Sugimori H, et al.:J Sex Med 2(3): 390– 396, 2005

前立腺がんや
膀胱がん治療の影響
前立腺がんなどのがんの治療に伴う手術がEDの原因となることがあります。
前立腺がんの罹病率は10万人あたり154.3人となっており、60歳ごろから高齢になるにつれて高くなります。
(出典:国立がん研究センターがん情報サービス https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/20_prostate.html(2023年8月21日閲覧))
初期では排尿に関する症状がないことが多く、がんと判断することが困難です。進行すると、頻尿、排尿困難、血尿、貧血や腰痛がみられることもあります。
こうした前立腺がんのほか、膀胱がん、直腸がんなどに対する摘出手術では、
勃起を起こさせる神経や血管が損傷し、EDの原因となることがあります。
また、手術をしたことによる本人やパートナーへの精神的影響により、
EDを生ずることもあるようです。
- EDの原因としてこんなものがあげられます
- ●
- 前立腺がん
- ●
- 膀胱がん
- ●
- 直腸がん

緩和医療ガイドライン作成委員会編:”8 性機能障害”がん患者の泌尿器症状の緩和に関するガイドライン 2016年版
金原出版株式会社:64, 2016
脊髄損傷などの
神経系遮断でEDに
脊髄に傷害を受けたために、身体の機能の一部が麻痺した脊髄損傷患者の方々にとっても性の問題は大変重要です。
脊髄は、肢体や内臓が脳と指令をやり取りする神経の通り道です。
横隔膜や頚部と上肢、胸と腹、下肢、骨盤内臓や括約筋と会陰部などは
脊髄神経を介して大脳に連絡しており、
傷害を受けた脊髄の部分によって障害の性質が異なり、
性機能障害が現れることがあります。
脊髄損傷によって、勃起を起こさせる刺激を伝える神経が
損傷されることがEDの原因となることがあります。

参考資料:「脊損ヘルスケア」編集委員会:“第7章 性機能障害” 脊損ヘルスケア・基礎編 NPO法人 日本せきずい基金:77,2005